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2015年12月7日、東京都大田区で「民泊条例」が成立し、来年1月から実施が予定されています。
また、大阪府でもすでに「民泊条例」が成立していて、こちらは来年4月からの実施が予定されています。

目次

1.「旅館業法」と「民泊」

ホテルや旅館の営業をしようとするときには、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあっては、市長又は区長)の許可を受ける必要があります。ここで、「営業」とは、一定の構造・設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させること、「宿泊」とは、寝具を使用して前各項の施設を利用すること、とされています。なお、寝具賃貸料やクリーニング代、室内清掃費も宿泊料とみなされます。
なので、「自宅の部屋に空きがあるから、宿泊料をとって誰かに泊まってもらおう!」とか、「余っている物件に布団等を常備しておいて、旅行者に宿泊してもらおう!」と思ったときは、旅館業の許可が必要となります。

2.旅館業法の特例

とはいっても、外国人の長期滞在ニーズへ対応する必要や、数年後に行われる東京オリンピックでは、長期宿泊できる施設が足りなくなることも予想されています。
そこで、「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業※」の登場です。一定の要件を満たせば、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあっては、市長 又は区長)の認定を受けることにより、外国人滞在施設の経営が可能となります。旅館業の許可よりも要件が緩和されています。

※ 国家戦略特別区域において、外国人旅客の滞在に適した施設を賃貸借契約及びこれに付随する契約に基づき一定期間以上使用させるとともに当該施設の使用方法 に関する外国語を用いた案内その他の外国人旅客の滞在に必要な役務を提供する事業(その一部が旅館業法に規定する旅館業に該当するものに限る。)として政 令で定める要件に該当する事業をいう(国家戦略特別区域法13条1項)。

3.認定の要件

認定の要件は、次のように定められています。なお、②の具体的期間は地域により異なることとなります。

①当該事業の用に供する施設であって賃貸借契約及びこれに付随する契約に基づき使用させるもの(施設)の所在地が国家戦略特別区域にあること。

②施設を使用させる期間が7日から10日までの範囲内において施設の所在地を管轄する都道府県(その所在地が保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合にあっては、当該保健所を設置する市又は特別区)の条例で定める期間以上であること。

③施設の各居室は、次のいずれにも該当するものであること。
 ・ 一居室の床面積は、25平方メートル以上であること。ただし、施設の所在地を管轄する都道府県知事(その所在地が保健所を設置する市又は特別区の区域にあ る場合にあっては、当該保健所を設置する市の市長又は特別区の区長)が、外国人旅客の快適な滞在に支障がないと認めた場合においては、この限りでない。
 ・出入口及び窓は、鍵をかけることができるものであること。
 ・出入口及び窓を除き、居室と他の居室、廊下等との境は、壁造りであること。
 ・適当な換気、採光、照明、防湿、排水、暖房及び冷房の設備を有すること。
 ・台所、浴室、便所及び洗面設備を有すること。
 ・寝具、テーブル、椅子、収納家具、調理のために必要な器具又は設備及び清掃のために必要な器具を有すること。

④施設の使用の開始時に清潔な居室を提供すること。

⑤施設の使用方法に関する外国語を用いた案内、緊急時における外国語を用いた情報提供その他の外国人旅客の滞在に必要な役務を提供すること。

⑥当該事業の一部が旅館業法に規定する旅館業に該当するものであること。

4.事業の実施に当たっての留意点

実際に営業をする際には、「外国人滞在施設経営事業の円滑な実施を図るための留意事項について」に注意が必要です。

①テロ対策、感染症対策及び違法薬物の使用や売春などの施設における違法な行為の防止
 ・滞在者名簿の備え、保存
 ・対面(映像等を含む)による本人確認(開始時・終了時)
 ・滞在状況の確認
 ・警察等の捜査機関への協力

②近隣住民の不安を除去
 ・事前に、施設の近隣住民に対し、適切に説明し、近隣住民の理解を得るよう努める
 ・近隣住民からの苦情等の窓口を設置し、近隣住民に周知するとともに、近隣住民からの苦情等に対しては適切に対応する
 ・滞在者に対し、使用開始時に、施設使用の際の注意事項を説明する
 ・必要な措置を講じる

①については、開始時と終了時の確認がポイントになるでしょう。映像の場合は、監視カメラやパソコンの設置等が考えられると思われます。

② については、近隣住民への説明と苦情等相談窓口の周知がポイントとなるでしょう。また、滞在者に対して、施設使用の注意事項の徹底も重要です。徹底が不十分だと、近隣住民とのトラブルにもつながりますし、施設の清掃等の経費にも格段に違いが生じると思われます。

5.許認可手続きのプロの視点

最大の壁は「条例の制定」です。国家戦略特別区域であっても、条例の制定が無ければ「旅館業法の特例=認定」を利用できません。
認定制度を利用できるアパートやマンションでは、施設の基準を満たすことは容易だと思われますが、「自宅の一室を………」と思っているときは、しっかりとした計画や改築が必要となるでしょう。
また、条例により「事業計画の内容について近隣住民に周知しなければならない。」等の定めがあるときは、慎重に対応をする必要があります。
認定後は、契約書や利用規約が重要となります。しっかりと作成しておく必要があるでしょう。

なお、マンション等で他の区分所有者による民泊を避けたいときは、規約の見直しをする必要があるかもしれません。

この記事や、法令に関するお問い合わせは、雫行政書士法務事務所まで、お気軽にどうぞ!

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